2.摩擦撹拌スポット接合法
図6 摩擦攪拌スポット接合の接合過程
図7 FSSWしたアルミニウム合金とめっき鋼板の接合界面
3. スタッド接合法

What's going on in Kumai Lab. (1/3).


種々の先端的手法を利用した同種・異種金属接合と接合機構の解明
  スタッド接合は、板材等に対してピンやネジなどの突起物(スタッド)を一定の圧力をかけ
ながら瞬間的に放電を行うことで接合する方法です。これまで造船や橋梁など様々な産業分野で
用いられて来ましたが,接合部を十分に融解して接合するため、薄い板材に対しては板材が変形
したり接合痕が残ったりするなどの課題がありました。

 そこで最近では、スタッドピンの形状と電極の位置を工夫して電流経路を制御することにより
接合部の温度上昇を接合界面近傍だけに抑えることに成功した改良型スタット接合が開発されま
した。改良型スタッド接合は、従来のスタッド接合の課題を克服するだけでなく、溶融接合から
固相接合へと接合形態を変えたことで、新しい固相接合法として学術的にも新規性ならびに将来
性があります。また接合痕が残らないことで実用的にも応用分野が広がり、モバイル機器や家電
機器など様々な箇所に用いられ始めています。しかし開発されてから日が浅く、接合強度や接合
界面組織、接合メカニズムに関する報告はまだありません。


 我々の研究室では、アルミニウム合金のスタッドピンを同種板材に接合を行い、ピン先端形状
が接合強度におよぼす影響について研究を進め、ピン先端形状を変えることで、これまでより
2
倍の引張強度を持つ強固な接合材の作製に成功しました。現在は異種材料との接合も含めて開発
企業との共同研究に取り組んでいます。
  摩擦撹拌スポット接合は、摩擦撹拌接合(FSW)を応用した接合法で、高速回転するツールを重ねあわせた被
接合材に挿入し、回転による摩擦熱と被接合材の塑性流動を利用する接合法です。接合に要する時間は数秒で
、接合材を溶融させることなく接合が行われます。
  近年、地球温暖化を防止するための対策の一つとして、自動車走行時の二酸化炭素排出量削減は必須であ
り、そのための車体の軽量化が進められています。そこで車体の軽量化を達成するために、鉄鋼材料からアルミ
ニウム合金への材料置換が注目されています。通常、鋼板には防食のために、めっきが施されています。そこで
アルミニウム合金とめっき鋼板の接合強度に及ぼすめっき層の影響について明らかにする必要があります。   
  本研究室では、摩擦撹拌スポット接合法を用いてアルミニウム合金板と種々のめっき鋼板の重ね合わせ接合
を行い、各接合材の接合界面組織ならびに接合強度に及ぼすめっき層の効果やめっき層の融点と接合機構との
関係について検討を行っています。図6に接合界面組織を示します。
  我々はこれまでレーザ溶接や摩擦撹拌接合等の先端的手法による同種・異種接合とその界面構造解析を行
ってきましたが、固相接合法に注目し研究を行っています。本研究室が現在研究を行っている固相接合法は主に
、電磁力衝撃圧着法、改良型スタッド接合法、摩擦撹拌スポット接合法です。それぞれの接合法について以下で
説明します。

  現在、Al/Al, Cu/Cu, Al/Fe, Al/Mg, Al/Ni, Cu/Ni, Cu/Fe等の様々な同種・異種金属接合材について、その特
異な接合界面形状とメタルジェットの発生挙動の解析ならびに採取したメタルジェットの成分解析を進めています。
  また、衝撃解析ソフトウェアを用いて、粒子法により衝撃圧着過程を再現することにも成功しています。これらの
一連の研究は、数多くの国際会議で招待講演を要請されるとともに軽金属学会論文新人賞、溶接学会優秀講演
賞等を受賞しています。
図3 多層接合材外観図
(a)
図4 高速度カメラによる電磁力衝撃圧着過程のその場観察
図10 接合界面の光学顕微鏡写真
図2 接合界面(a:Al/Ni, b:Al/Al)
(b)
1.電磁力衝撃圧着法
フッターイメージ
図1 電磁力衝撃圧着法模式図

  衝撃圧着法は固相接合法の中でも母材への熱影響が少ない接合法の一つ
です。金属板を高速傾斜衝突させると表面層がメタルジェットとして放出されま
す。そこで、金属表面が清浄化され、表面の原子が結合することによって接合
がなされます。接合に要する時間は数マイクロ秒と極短時間です。
  本研究室では、金属板を電磁力によって局部的に高速変形させ、相手材に
傾斜衝突させて接合を行う電磁力衝撃圧着法に注目して研究を行っています。
これまでの研究により、接合界面は波状を呈し接合界面近傍の組織はアモルフ
ァス、超微細粒あるいはそれらの複合組織となることを見出しています。
  また、多層接合や金属と金属ガラスの接合、および高速度ビデオカメラを用
いた接合過程の金属板変形挙動とメタルジェット放出の撮影にも成功していま
す。
  
その他の研究テーマ

◯ 高速ロールキャスト法を用いた新合金開発と高品位金属リサイクル

◯ ハイブリッド材料に組織制御による力学的特性の向上とその評価手段の開発

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図8 改良型スタッド接合模式図
図9 スタッドピン
図5 シミュレーションによって再現されたメタルジェット放出と波状界面