我々大学人の使命は、何よりも優れた人材を世に送り出すことです。そのためには
材料科学の基盤となる自然科学の基礎学問を伝承するとともに最新の学術的問題に取
り組み、さらに地球環境保全や国際社会に貢献できる良識ある人物を育成しなくては
なりません。

教育の最終目的は、学生の皆さんが自立していくこと。すなわち学生の皆さんに自分
自身で育つ力を身につけてもらうことです。学生の皆さんに、毎日の研究室生活にお
いて、いま我々が研究していることの面白さや意義を伝えると共に、研究をさらに発
展させていくために必要な知識や技術を理解させ,徹底的にたたき込むことができる
よう努めます。もちろん、そのためには教える側が常に学ぶ側の何倍もの速度で学び
続けていくよう努力したいと思います。

 大学における学士・修士・博士論文研究は、優れた研究成果の獲得ならびにその成
果の社会還元が目的であると同時に、優れた人材・学問や技術の後継者を育てるため
の手段として機能するものでなくてはなりません。よって学生の皆さんの個々の希望
や適性を考慮して研究テーマ・研究スケジュールを立案し,その意義・役割を理解さ
せて、学生の皆さんが研究遂行への使命感,達成できたときの充実感、あるいは達成
しようと努力している最中の充実感をもてるようリードしていきたいと思います


 もちろん学生の皆さんには、これまで経験のない、新たな分野へのチャレンジする
勇気をもってもらうことが必要ですし、問題解決能力を自ら育むためは、ときには失
敗・挫折・停滞等の経験も必要かもしれません。頑張って一緒に乗り越えていきまし
ょう。

熊井真次


これまで行ってきた研究テーマ
構造材料の耐久性(疲労)に関する研究

● 微視組織組織制御による構造材料の力学的性質の向上に関する研究

● 凝固現象の基礎研究


現在進行している研究テーマ
種々の先端的手法を利用した同種・異種金属接合と接合機構の解明 (1/3)

縦型高速双ロールキャスト法を用いた新合金開発と高品位リサイクル (2/3)

ハイブリット材料の組織制御による力学的特性の向上とその評価手法の開発 (3/3)



 熊井研究室のこれまでの研究を概観すると、(1) 構造用材料の耐久性(疲労)に関する
研究、(2) 微視組織制御による構造用材料の力学的性質の向上に関する研究、(3) 凝固
現象に基礎研究の3つに分類できます。



1.構造用材料の耐久性(疲労)に関する研究

 粒子強化複合材料の疲労き裂伝播特性への分散粒子とマトリックス組織の効果につ
いて研究を行い、特に微小疲労き裂の進展に及ぼす分散粒子との効果について明らか
にしました。また、これを利用して、応力-ひずみ応答の変化や他のき裂検出手法で
は発見できないようなごく早期の鉄鋼材料の腐食疲労き裂発生を電気化学的に検出す
る手法を提案しました。
 この他にも、航空機用アルミニウム合金の疲労き裂成長挙動に及ぼすき裂閉口現象
の影響や環境の効果、過大荷重の効果等に関し、多くの研究成果を挙げています。



2.微視組織制御による構造用材料の力学的性質の向上に関する研究

 まず、外力負荷による時効析出相のナノ構造制御に関する研究が挙げられます。合
金の時効処理(析出のための等温保持)中に圧縮応力を負荷し、マトリックス相の結晶
格子ひずみによるエネルギー変化を利用することによって特定の結晶面での析出相の
核生成を促進し、析出相の配列を制御することに成功しています。
 また、析出相の臨界核サイズや析出相の種類による応力感受性の違いなど固相変態
における重要な基礎的問題についても検討を行いました。析出強化は構造用金属材料
の最も重要な強化機構の一つであり、本研究の成果は材料の高強度化手法として工業
的にも大きな利用価値があります。
 さらに、特定のすべり系の活動を拘束する手法を用いて、金属間化合物の力学的性
質と転位組織の関係について検討し、金属間化合物特有の特異な強度の温度依存性を
解釈するために有益な基礎的知見を得ています。



3.凝固現象の基礎研究

 共晶反応、包晶反応とならぶ重要な固液変態であるにもかかわらず従来ほとんど知
られていなかった偏晶反応凝固における組織形成機構について基礎的研究を行い、そ
の凝固過程を明らかにするとともに固液界面における固相と組成の異なる2液相の界
面エネルギーの関係と組成的過冷却理論に基づき、in-situ複相組織化のための凝固条
件を確立しました。また日本で初めて本研究に関するスペースシャトルを利用した宇
宙実験を提案し、毛利衛さんが搭乗した"FMPTふわっと'92"で無重力実験を実施しま
した。

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